正直、最初の頃はあんまり深く考えないようにしてたんです。幸子(妻)の病気がパーキンソンかもしれないって話があって、「どうなっちゃうのかな」とは思ってたけど、考えたってどうにもならないだろって気持ちのほうが強くて。
あの頃は、2人で病気について話すこともほとんどなかったですね。
でも、幸子(妻)は自分なりにいろいろ調べていて、「発症から7年くらいって聞いたよ」って教えてくれたこともありました。
介護保険を使うようになって、ようやく少しずつ現実と向き合うようになった気がします。
最初は、正直「嫌だな」って思いましたよ。
やっぱり、見ず知らずの人が家に入ってくるっていうのは、抵抗がありましたしね。特に男の人が来るって聞いたときは、余計にね。
でもね、実際にサービスが始まって、少しずつ生活が回るようになってくると、「ああ、これはこれでありがたいもんだな」と思えるようになったんです。
何より、自分の負担が減ったのは大きかったです。あのときは本当に助かりました。
うーん、細かいことは覚えてないんだけど……
幸子(妻)がね、看護師さんたちのことを本当に信頼してたんですよ。
何かあればすぐ電話してたし、時間とか関係なく来てくれて。
それがありがたかったですね。
自分もね、看護師さんに見守られてるような気持ちになってたこともありました。
あんまり深く考えない性格なんで、はっきりした会話っていうのは思い出せないけど…。
病気が進んできてからは、幸子(妻)もだんだん話すのが大変になってね。
2人でテレビ見てる時間が多かったかな。
でも、ひとつだけ、はっきり覚えてる言葉があって、「死ぬときは、2人一緒がいいね」って、幸子(妻)がぽつんと言ったことがあったんです。
それは、ずっと心に残ってます。
俺なんかが偉そうなこと言える立場じゃないけど…。
強いて言えば、「無理はしないほうがいい」ってことかな。
家族だけでなんとかしようとすると、限界があるんですよ。
プロの手を借りるっていうのは、決して甘えじゃないし、むしろそれが一番いい方法かもしれません。
本人も家族も、心に余裕ができるから。
在宅で見送れて……うん、よかったと思ってます。
いろんな感情はあるけど、「ああ、あのとき自宅でいられてよかったな」って、今は心から思います。
やっぱり、最後の時間をいつもの場所で一緒に過ごせたことは、大きかったですね。