
訪問看護に転職したばかりの看護師さんから、よく聞く声があります。
「一人で訪問するのはもちろん怖い。でも、もっと怖いのは、初めて伺う利用者さんの家に行くことなんです」
●いつもの担当さんがお休みの日
●急に代わりを頼まれた日
●週3日の勤務で前回からしばらく間が空いてしまった日
玄関のチャイムを押す前に頭をよぎるのは、こんなことです。
カルテを読めば書いてある。
そう思いますよね。
でも実際には、記録を一から読み返す時間はなかなか取れません。
読んだとしても「結局、今日は何を見ればいいの?」が分からないこともあります。
前夜にスマホで記録を何度も見返して、それでも不安なまま朝を迎える。
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
あみ訪問看護ステーションでは、この「はじめまして」の不安を個人の努力ではなく仕組みで減らそうとしています。
今日はその取り組みを正直にお話しします。
まず、私たちが大切にしている考え方があります。
記録は、次にその家へ行く人への手紙である。
訪問看護の記録は請求や監査のために必要な書類です。
それは間違いありません。
でも、それだけで終わってしまうのはもったいない。
在宅の現場では利用者さんの小さな変化に気づけるのは、その場にいた人だけです。
「今日は少し足がむくんでいた」
「ご家族が夜の介護に疲れている様子だった」
こうした気づきが記録の中に埋もれてしまうと、次の人は同じことを一から見つけ直すことになります。
逆に、前回の気づきがきちんと届いていれば、次の人は「その続き」から始められます。
利用者さんにとっても毎回同じ説明をしなくていい。
これは安心につながります。
では、具体的に何をしているのか。
あみ訪問看護ステーションでは看護師が入力した記録(SOAP)をAI(Gemini)でチェックしています。
AIに見てもらうのは、主にこの4つです。
実際にAIからは、
▶ バイタルの数値は書いてあるけれど、その評価がない
▶ 医師やケアマネジャーとの連携内容が抜けている
▶ 残薬の数が書かれていない
といった指摘が返ってきます。
なかでも、私たちが一番大事にしているのが4つ目の「次回確認すること」です。
たとえば、
「残薬が多め。次回、飲み忘れの有無を確認」
「来週受診予定。結果を確認」
「右かかとの赤み。継続して観察」
といった内容です。
人の目だけでは、忙しい日ほどこういう「次へのバトン」が抜け落ちがちです。
AIは、それを拾い上げる助けになってくれます。
AIが出した「次回確認すること」は、Googleカレンダーの次回訪問の予定に貼り付けておきます。
すると、次にその家へ行く人は、カレンダーを開くだけで分かります。
✅ 前回どんな様子だったか
✅ 残薬はどうだったか
✅ 受診の結果はどうだったか
✅引き続き見ておくべきことは何か
たとえば、急に代わりで訪問することになった朝。
カレンダーに「残薬が多め、飲み忘れを確認」「来週受診予定」と書いてあれば、車の中で数分見るだけで準備が整います。
玄関に入ったら「先週の受診、どうでしたか?」と自然に声をかけられる。
利用者さんにとっても「ちゃんと伝わっているんだな」という安心になります。
分厚い記録を読み返さなくても玄関の前で「今日はここを見よう」と頭を整理できる。
担当外の訪問でも、週3日勤務で間が空いても、前回の続きから始められる。
これが、この仕組みの一番の狙いです。
もうひとつ取り組んでいるのが、チェックリストづくりです。
ケアプランや主治医の指示書には「この方には何を観察し、どんな援助をするのか」が書かれています。
その中から必要な項目を抜き出してチェックリストにし、記録に書くべき項目と照らし合わせています。
これがあると「何を見て、何を書けばいいのか分からない」という迷いが減ります。
経験が浅い人も、久しぶりに伺う人も、同じ視点で利用者さんを見られるようになります。
「ベテランの頭の中にしかない観察ポイント」を誰でも見られる形にしておく。
人によってケアの質がぶれないようにすることもチームで在宅を支えるうえで大切だと考えています。
ここまで読んで「AIがあれば楽そう」と思った方もいるかもしれません。
でも、ここははっきりお伝えしておきます。
AIが出してくるのは、あくまで下書きです。
内容によっては50点くらいの出来のこともあります。
そのまま貼り付ければ空欄が残っていたり、利用者さんの実際の様子とずれた文章になっていたりします。
だからあみ訪問看護ステーションでは、AIの出力をそのまま使うことはしません。
✅不自然な表現は直す。
✅足りない情報は看護師に確認する。
ときには何度もやり取りをして、ようやく一つの記録が仕上がります。
記録に責任を持つのはAIではなく人です。
AIはあくまで「抜けに気づかせてくれる相棒」
この線引きは、これからも変わりません。
正直に言うと、この流れはまだ全員の習慣にはなりきっていません。
記録をその日だけで終わらせず、毎回次へつなげる。
これを当たり前にするために今も現場と事務で話し合いながら少しずつ形を整えている最中です。
訪問看護は、一人で訪問する仕事です。
でも、一人で全部を覚えておく仕事ではありません。
前回の様子も、気をつけることも、次に行く人へきちんと届く。
分からないことがあれば、記録とカレンダーが教えてくれるし、チームに聞けばいい。
あみ訪問看護ステーションが目指しているのは、そんな職場です。
「訪問看護に興味はあるけれど、知らない利用者さんのところへ行くのが不安」
「週3日や短時間でも、ついていけるか心配」
そんな方にこそ、一度あみ訪問看護ステーションの働き方を見に来てほしいと思っています。
完璧な仕組みではありません。
それでも、記録を「次の人への手紙」として大切にする職場で一緒に利用者さんの在宅生活を支えてみませんか。