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『報告書なんて5分で書ける、AIは要らない』は本当か?

2026年10月22日

AIを積極的に使っている訪問看護ステーションの正直な答え

介護・看護の業界でも、AIの話題を聞かない日はなくなりました。

同時に、こんな声も耳に入ってきます。

「報告書なんて、1件5分もあれば自分で書ける。AIなんて要らない」

先に立場を明かしておきます。

私たちは、AIを積極的に使っていく側です。

記録の仕組みづくりにも、日々の書類にも使っています。

そのうえで今日書きたいのは「AIはすごい」という話ではありません。

AIに任せていいことと、人間が手放してはいけないことの線引きの話です。

そして、その線の向こう側にある「人間らしさとは何か」ということです。

 

『5分で書ける』は、たぶん本当です

まず「5分で書ける」という主張を否定するつもりはありません。

経験を積んだ方なら、1件の報告書を5分程度で仕上げられるでしょう。

書くべきことが頭の中で整理されているので手が勝手に動きます。

その人にとっては、AIに指示を出す時間のほうが長いかもしれません。

事実だと思います。

ただ、論点がひとつずれていると感じます。

現場で本当に困っているのは、1件5分で書ける人ではありません。

「何を書けばいいのかわからない」
「これで足りているのか不安で、何時間も見直してしまう」
という人です。

この人たちが書類のたびに疲弊し、期日に間に合わなくなっています。

AIの価値は、できる人をもう少し速くすることではなく、できる人とできない人の差を埋めることにあります。

その差が埋まったとき、事業所全体の余裕が生まれます。

 

私たちがAIに任せていること

具体的に、私たちがAIに任せているのはこういうことです。

✅書類に必要な項目が揃っているかのチェック
✅決まった型に沿って文章を整えること
✅伝えにくい内容を角が立たない表現に直す下書き
✅ばらばらの情報を見やすい形にまとめ直すこと

共通しているのは、どれも「正解の形」が決まっている作業だということです。

ここに時間をかけてもケアの質は1ミリも上がりません。
だから私たちは、ここを手放します。

 

AIに渡せないのは「1・2・3」を決めること

とはいえ、AIに丸投げすれば書類が出てくるわけではありません。

結局のところ、AIに入れる前に人間が決めなければならないことがあります。

今日の訪問で本当に大事だったのは何か。

1つ目、2つ目、3つ目は何か。

熱が上がったことなのか。

ご本人が「もう病院には行きたくない」と漏らしたことなのか。

ご家族の表情がいつもと違ったことなのか。

この見立てだけは、どんなに技術が進んでも現場にいた人間にしか出せません。

要点さえ人間が押さえれば、あとの整形はAIが担ってくれます。

逆に言えば、要点を押さえられなければAIは立派な文章の形をした中身のない報告書を作るだけです。

「AIに仕事を奪われる」のではありません。

何が大事かを見立てる力が、これまで以上に問われるようになるのだと思っています。

 

私たちの理念は、AIとは相性が悪い

ここで、少し私たちの理念の話をさせてください。

あみ訪問看護ステーション(株式会社愛慈)の理念は「ふれ愛う こころ、慈しみ 想う」です。

マニュアル通りの支援ではなく、一人ひとりの人間らしさに向き合い、気遣いと思いやりで支えること。

小さな変化を見逃さないこと。

これを大切にしています。

正直に言えば、この理念はAIととても相性が悪い。

数値化できず、マニュアル化もできないからです。

玄関を開けた瞬間の匂いの違い。

いつもと違う新聞の置かれ方。

「大丈夫」と言うときの、ほんの少し低い声。

ご家族が一瞬だけ見せた、疲れた表情。

こうしたものは、データとして入力されません。

その場に身体ごといた人間だけが受け取れる情報です。

そして私たちの仕事の本質は、間違いなくこちら側にあります。

 

だからこそ、AIを使う

理念と相性が悪いのなら、なぜAIを使うのか。

答えは単純です。

そちらに使う時間を増やすためです。

書式を整えることに1時間かけている看護師と、その1時間を「なんとなく気になる」を確かめる時間に使える看護師。

どちらのケアが、かゆいところに手が届くでしょうか。

AIを導入する目的は人員を減らすことでも効率化そのものでもありません。

人にしかできない仕事に人の時間を集中させるためです。

ここを取り違えるとAIは現場を冷たくする道具になってしまいます。

 

『人間らしい』とは、効率の外側にあるもの

「人間らしさ」について思っていることを書きます。

私たちの思い描いている将来の姿のひとつに入居される方が「誰かの役に立てている」と感じられる場所をつくる、というものがあります。

これは、効率で考えれば不合理なことです。

手伝っていただくより職員がやったほうが速い場面はいくらでもあります。

それでも、人は誰かの役に立てたときに自分を人間だと感じます。

「やってもらう人」であり続けることは想像以上にその人の力を奪います。

効率を突き詰めた先に残るもの。
それこそが人間らしさなのだと思います。

だから私たちは、効率化できるところは徹底的に効率化したい。

そうして空いた手と時間を、その方が「自分でできた」「役に立てた」と感じられる瞬間のために使いたい。

「AIは要らない」でも「AIがあれば大丈夫」でもなく、AIに任せる範囲を決められる事業所であること。

それが、これからの在宅ケアに求められる姿勢だと考えています。

ふれ愛う こころ、慈しみ 想う。

私たちのこの理念は、AIには一行も書けません。

AIに書けるのは報告書のほうです。

だったら任せてしまいましょう。

私たちは書けないほうの仕事をします。

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